ドル・ユーロ等の外貨金利予想、その影響の背景

国内企業が海外で企業買収を行う場合や、銀行やリース会社等の金融機関が航空機や不動産などに海外資産に投資する場合は、米国ドルやユーロ等の外貨を調達(借りる)ことになります。

日本では、日銀のマイナス金利政策により現在の借入金利は、近年稀にみるほど低くなっています。身近な住宅ローンは、一部のネット銀行などでは0.4%台など非常に低くなっています。

今回は、この外貨の金利動向に見通しを勝手に考えてみます。

本邦勢の外貨調達コストは、米国やEU諸国の政策金利引き上げに伴うLIBOR等の基準金利上昇を主因に上昇すると予想されます。

では、その要因を分解して考えます。

ちなみに、外貨の総調達コストはザックリ次の式で表されます。

総調達コスト=①基準金利+信用スプレッド(会社の信用力で変動)+②外貨コスト

今回は信用スプレッドは考慮しません。

①基準金利の動向

米国・EU諸国ともに経済は引き続き、堅調な見通し。

そのため、FED※は3月のFOMC※の声明文で「Further(さらなる)」との単語を利用し強気な景気見通しを継続し、2018年内の政策金利の引き上げは少なくとも3回は行われると予想する市場関係者が多い。

ECB※も理事等発言※から、2018年後半に政策金利の引き上げ時期が前倒しも想定されている。従来の利上げ時期の予想は、早くて2019年とする市場関係者が多かった。

以上より、米国およびEU諸国の政策金利の引き上げに伴い、外貨借り入れ時に利用されるLIBORやEURIBORが上昇する可能性が高いと考えている。

 

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FED米国の中央銀行制度。中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)、公開市場操作を決定する機関で、連邦準備制度理事会が開く金融政策の最高意思決定会合である連邦公開市場委員会(FOMC)、そして連邦準備制度理事会の下にある機関で、全米の12地区にある連邦準備銀行(FRB)の総称。

FOMC連邦公開市場委員会Federal Open Market Committeeの略称)。米国の金融政策である公開市場操作(金融機関の資金需給を調節を実施)の方針を決定する委員会。

www.federalreserve.gov

※ECB:欧州中央銀行。ユーロ諸国の金融政策を担う中央銀行

 

②外貨コスト動向(以下記載は、米国ドルについて)

足元の外貨調達コストは安定しているが、トランプ政権が打ち出した米国のレパトリ減税※が米国の短期金融市場へ影響する点に注意する必要がある。具体的には、海外留保金に対する強制課税の支払いにより、CD/CP、レポなどで運用されていた資金が短期金融市場から引き上げられる可能性がある。

そのため、この短期金融市場から米国ドルを調達している、日本や欧州の金融機関は相応に影響を受けるとの見通しもある。

一方、米国を代表するAppleMicrosoftGoogleORACLEなどのグローバル企業は海外留保利益こそ大きいが、その留保金の大部分を社債国債にて運用しており、MMFやCD/CP等の割合が小さく、短期金融市場で米国ドルの調達コストが大幅に上昇することはないと予想している。

 

レパトリ減税:米国以外にある利益等の余剰資金を米国に還流(レパトリエーション)させる際に課す税金を減税すること。今回は同時に米国企業の既存の海外留保金に強制課税を実施するもの。

 

上記見通しの環境認識および考察の背景

世界景気の回復・拡大継続を背景に、米国ではFEDによる2018年中の金融正常化(緩和縮小)が、EUでもECBによる2018年後半~2019年にかけての金融緩和縮小が意識される状況となっており、FEDとECBの政策金利引き上げにつられて、外貨調達コストに上昇圧力がかかると認識しています。

また、米国政府の債務上限問題※も継続している中、トランプ政権は中国との貿易戦争の準備を行っており、世界最大の外貨準備高を誇る中国政府の米国債購入姿勢(米国ドルを中心とした外貨準備金の運用先)も今後、大きく影響する可能性もあります。

上記、債務上限問題はT-Bills※市場が現在は逼迫しており、本邦金融機関が米国債レポ市場から米国ドルを調達する基準レート:OIS※は安定しており、米国債市場および金利市場への影響は出ていません。しかし、債務上限問題解消後のT-Bills発行増加の可能性やFRB※のバランスシート縮小による、市場の変化には引き続き注意が必要です。

 

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※債務上限問題:米国では、政府債務の上限が法律で定められている。過去に政府が戦時国債を大量に発行することを通じて国民の経済的利益が損なわれることがないよう、議会がチェックするという観点から、リバティボンド法で定められたもの。債務残高が上限に達すると、連邦政府は、新たな借り入れ、国債の利払いが難しくなり、議会による債務上限額引き上げ法案の成立が必要となる。この債務上限を法案が設立しないと、連邦政府機関が閉鎖されるなどの市民活動に影響を与えると同時に、米国債の発行問題を通じて短期金融市場に影響を与える問題である。

※T-Bills:米国財務省短期証券(Treasury Billsの略称)。米国政府が発行する米国債(割引債)で、一時的な資金不足を補うために発行される、償還期間1年以下の短期国債

※OIS:翌日物金利スワップOvernight Index Swapの略称)。OISには政策金利に対する見通しが織り込まれているため、ほぼ政策金利の見通しだけを反映して決定される。

FRB:連邦準備制度理事会(Federal Reserve Boardの略称)。米国の中央銀行制度(FRS:連邦準備制度)の最高意思決定機関であり、米国の中央銀行に相当する機関。